テレビ朝日系列 スイスぺ! 藤岡弘、探検シリーズ回想録 Vol.1

探検が教えてくれるもの。

昨年クリスマスの特番スペシャル藤岡弘、探検隊『アマゾン奥地1500キロ!テラプレータの密林に謎の猿人ジュンマは実在した!』から復活を遂げた「探検」シリーズ。先日はその第2弾が放映されました。ご覧戴けたでしょうか。人間をも簡単に飲み込んでしまう、10mを越す大蛇との死闘。一歩間違えば命を落としかねない危険に晒されながらも、無事生還。弟子と共に良き経験をさせて頂き、責任を果たすことができました。今回の探検は、前回をはるかに超える危険度で私たちの前に立ちふさがりました。行く所、行く所、ありとあらゆるところに蛇がいる。その中には少なからず、毒蛇がいた。サソリの大群や毒虫、マラリアの蚊、吸血ヒル等、現地のプロの蛇使い達がいなかったら、隊員の一人や二人は命を落としていたかも知れません。次なる探検ではいかなる試練が待ち受けているのか。それはまだ判りませんが、ますます過酷で困難な旅になっていく可能性はありますね。

ベトナム奥地に住む、ムオン族の子供たち。

ラオス・モン族の村で見た小動物。

さて今世紀に入って「探検隊」は復活したわけですが、何故今この時代に「探検」なのでしょうか。私はこう考えています。目的を達成するため、様々な艱難辛苦を乗り越えながら、前進する探検隊。常に極限状態に置かれる隊員達を束ねていくためには、隊長である私が、先頭を切って突き進み一致団結して、勇気をもって挑戦し、気迫をもって苦難を乗り越えていかなければならないと思っています。その姿は、愛する家族を守るため、日夜社会の荒波の中で戦う父親の姿でもあります。時代の流れでしょうか、今や優しくなった父親のイメージ。そんな優しい父親達は、活力を失った社会の中でもがき苦しんでいる様にも見えます。そして、そんな時代だからこそ強いリーダーの存在が必要とされるのではないでしょうか。あえて言わせてもらえば自らの危険を顧みず、エゴを捨て他のために自己を犠牲にしたとしても、責任を果たそうとするその姿が、やがて人々の心の奥底に眠る善なる思いを突き動かし、時代の変革(変身)を呼び起こすまで、戦い続けたい。それが今、隊長として危険な「探検」に飛び込んでいく、私の中の本当の気持ちなのです。

ラオス国境地帯のジャングルにて。

ラオス・モン族の子供たち。

「探検」をしながら世界中を旅すること。それは幼いころから描いてきた私の夢でした。今こうして、その場を与えられたことに深い縁を感じています。また、瞬きさえも許さぬほどに次から次へと危機が襲ってくる探検の中にも、様々な喜びと出会いを見つけることができます。辿り着くことさえ困難な奥地にも、人間は生きているという事実。極限の中で必死に、命がけで真剣に生きている人々の力強さ、とりわけ子どもたちの姿には感動と共に尊敬すら覚えます。屈託の無い彼らの笑顔と、真剣な輝く眼差しに接すると、「あ〜、人間が生きるとは何と素晴らしいことだ。」と思わざるを得ません。裸に近い格好をした彼らの生命力をビンビンと感じるのです。便利なものなど無い、おしゃれな食事なんてどこにも無い。文明社会ではよく見かける抗菌グッズなんて物は、ある筈もない。不自由で不便で、甘えることのできない環境の中でも彼らはたくましく、そして美しく生きているのです。自然を畏れ、自然と共存し、一体となり生きるその姿は、人間としての尊厳に満ちています。
そしてそこには、我々が普段目にした事もない、数多くの未知なる生物との出会いもあります。その一つ一つに出会うたびに、我々は、この地球のことを未だほんの少ししか、知らないのだということを思い知らされます。圧倒的な自然の力や抗うことのできない弱肉強食の掟を目の当たりにするたびに、人間という存在の弱さも実感します。私は探検を通じて、人間探究の旅をしているのだと思います。見えない力を感じながら畏れ、偉大な自然の力と脅威、そしてそこに生きる人間の知恵と勇気と生命力。それを支える家族の愛。出会ったものすべてが感動であり、発見であり、学びであり、教訓であるのです。
この探検を通して、私は人間や自然がますます好きになり、人間として謙虚になる事を知りました。これから出会うであろう人々からもたくさんの勇気をいただくことでしょう。その一つひとつを感動とともに、映像に乗せて皆様の元に届けたい。また、届け続けることが探検隊を任された隊長である私と隊員達の使命であると感じています。我が愛弟子と共に、これから先に待ち受けている冒険とロマンに思いを駆せて、己を磨き続けていきたい、そして、感動と愛の発見の旅に挑戦し続けていきたいと思っております。   

合掌、

藤岡弘、


 

 

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